WED代表の山内があらゆる業界のものづくりのプロたちを招き、彼らの半生や考えを聞き、議論することで、ものづくりをアップデートしていく『CHAKAI』。第二回目のゲストは、株式会社Luup代表取締役社長兼CEOの岡井さん。Luupについてたっぷり話を聞いた前編に続き、後編ではお互いの経営やものづくりのこだわりについて議論しました。
host
山内 奏人
WED株式会社 代表取締役
guest
岡井 大輝
株式会社Luup 代表取締役社長兼CEO
1993年東京都生まれ。2017年東京大学農学部を卒業。戦略系コンサルティングファームにて上場企業のPMI、PEファンドのビジネスDDを主に担当。その後、株式会社Luupを創業。代表取締役社長兼CEOを務める。2019年5月には国内の主要電動キックボード事業者を中心に、新たなマイクロモビリティ技術の社会実装促進を目的とする「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、会長に就任。
良い会社の条件は、経営者が意思決定に関わりすぎないこと
山内:岡井くんはいつから事業をやりたいって思ったの?
岡井:大学生くらいかなぁ。僕の中では事業をつくるというよりも、概念をつくるという表現の方が近いと思う。僕は昔から私立の学校に通わせてもらったり、友達もたくさんいたり、ずっと恵まれて生きてきたんだよね。
だから特にコンプレックスがない僕は、人類の前進に貢献するっていう概念に辿り着いて、それが事業をつくる原動力になってるかなぁ。本心はまだあるんだけど、一旦この回答にさせてください(笑)
山内:岡井くんてさ、27歳とは思えない価値観を持ってるよね。影響を受けた人とか出来事ってあるの?
岡井:山内くんが言うな(笑)。でも、それでいうとあまりないんだよね。人類の前進に貢献したいっていう概念も含め、基本自分の根底に価値観があるの。本や映画も、感動することはあるけど、過去の自分の経験のつなぎ合わせを映像にしたものだから、新しい世界の姿は求められないじゃん。だから、趣味もないんだよね。
山内:すごいな。気分転換したい時とかアイディア出さないといけない時ってどうしてるの?
岡井:人と会ってるかなぁ。最近は、バックグランドや境遇は全く違うけど苦労を抱えて頑張ってる人たちと飲むのがすごい楽しい。僕らって、結構孤独じゃん。苦労をしてないと分かり合えない共感の領域があるし、業界は違えど内心みんな意識し合ってるじゃん。謎の嫉妬と緊張感があるのに、誰からともなくそろそろ会いたいねってなるのがいいんだよね。
山内:その楽しみって、年齢も領域も関係なくあるよね。僕らはまだ数年しかこの道でやってきてないけど、10何年後は深みが違うんだろうね。
岡井:これが最近の趣味かな。経営する前はあったと思うけど、経営してからは仕事にマインドが取られるから、時間もないし趣味と言えるものが無くなっちゃったなぁ。
山内:でも、仕事っていう仕事は無くなってきたんじゃない?趣味ないと寂しくない?
岡井:そうなの。最近副社長が二人ジョインしてくれて任せるようになったから、仕事が減って寂しいの。でも、経営者が忙しいのは良くないことだし、ジェフ・ベゾスですら朝起きて午前中に3つ意思決定して1日の仕事終わるんだよ。僕ごときがそれよりも意思決定してはいけないと自分に言い聞かせて、減らしていってるよね。
山内:僕も去年「ONE」のプロダクトオーナーを初めて渡して、一時期よりは手元の業務が減ってきたよね。
岡井:この問題はみんなにあるよね。そういう時何してるの?
山内:プロダクト作ってるね。自分が仕事しないことが組織にとって良いっていうのは、すごい正しいけどもどかしいよね。仕事したくなっちゃうじゃん。
岡井:考えるのはいいけど、あれこれ発言しない方がいいんだよね。それが良い会社の条件だと思うし。
山内:創業当時、誰かに教えて欲しかったよね。今めっちゃ忙しいけど今後日増しにゆとりが持てるようになっていくから、趣味を作っておいた方がいいよって。だから経営者ってみんな、趣味にもストイックなんだろうね。
岡井:暇すぎて精神が崩壊しないためにも趣味は作った方が良いよね、本当はね。
「僕と山内くんのものづくりって真逆だよね」
山内:最近リリースしたアプリに、初めてクレジットを入れたんだ。作り手である僕たちの想いをちゃんと伝えないといけないと思って。
岡井:これいいね。
山内:でしょ。これ結構新しいよね。映画とかもクレジット入ってるし、作り手である僕らの想いがここにつまってるってことをちゃんと伝えようと思って。
岡井:面白いね。僕は誰が作ったかは記憶されて欲しいけど、その人じゃなくても運営できるようなものであって欲しいと思うんだよねー。
山内:それはすごくインフラ的な考え方だね。
岡井:うん。山内くんは細部にまでものづくりのこだわりがあるよね。
山内:そうそう。ものづくりって極論作り手のエゴなわけじゃん。このアプリもスクロールした時やロードする時の、本当に細かいアニメーションにこだわってる。
うちって、つくるプロセスにもこだわっていて、製造業みたいに工程を全部書いてから、一つずつラインに乗せてアプリを組み立てていってるんだ。つくっていく過程でプロダクトの完成度が決まると思うし、つくる過程が面白いんだよね。事業って完成形がないからいいよね。売上作っていくのも、プロダクトを成長させていくフローの一つじゃん。
岡井:僕にとってのものづくりのエゴは、いかにミッションファーストに近づけられるかで、世間一般的に言うようなエゴは、あえていれないようにすることなんだよねー。ミッションのために最適なものが生まれてたら、よくできたと感じるな。
山内:それこそ、音楽とかも究極のエゴだよね。
岡井:んー、でも最近は「集合体としての共通の認識」で音楽に追加価値がつくようになってきたと思うよね。
山内:カラオケでみんなが歌ってて、みんなが共感できるからいいと思うってやつね。
岡井:そうそう。絶対他の人では作れないような、誰が見ても衝撃を受けるクオリティの作品は、エゴが全開なのがわかる。でも、最近tiktokとかを起点にして人気が出てる曲の多くは、みんなが知ってて共感できるものが多くて、彼らはどんなエゴを表したいのかな?とか感じるときもあるなー。
山内:それって、大衆受けする曲を作りたいっていうエゴなのかもね。みんなが聞いて心地良くて、誰もがわかる難しくない歌詞を作ることで、10年後とかに懐かしいと思って欲しいんじゃないかな。
「あの曲凄かったよね」じゃなくて、「あんな曲あったよね」とか広くみんなに聞かれる曲を作る音楽性なのかもしれないよね。片や岡井くんのいうように、自分の陰鬱としたことを音楽を通してコミュニケーションする人もいるじゃん。有名になりたい人と表現をしたい人で、完全に二コミュニティが極化してるよね。
岡井:山内くんはどっちなの?
山内:わかんないな。でも、僕はこれまでずっと表現をしてた。プログラミングをする前もアニメーションとか作ってたし。最近20歳になってnoteにこれまでの人生を振り返ってたんだけど、本質は全然変わってなかった。
日頃から世の中や事業領域に対して色んなことを感じているから、本能的にアウトプットしたいんじゃないかな。別に意識的にアウトプットしたいと思ってしてるわけではない。でも、プロダクトにおいての意思決定は絶対にできるから、それをやり続けていった結果、プロダクトがエゴの塊になったんだよね。
岡井:そのエゴで迷ったときの感性は、自分の内側と外側の世界どっちにあるの?僕は人間の中にこそ真理があると思ってるから、自分の中で考えるか人と話しながら考えるけど、自然に行って考える人もいるよね。
山内:どっちもある。サービスの名前を考える時は、絶対に外には行かないけど。
岡井:僕と山内くんのものづくりって真逆だよね。良いもの作ったから使って欲しいと思うのが山内くんで、趣味趣向関係なくみんが使う必然性があるものをつくるのが僕。
山内:たしかにそうだね。良いもの作ったら使って欲しいもん。なんか難しいな、このまま人生の話がしたいな(笑)。
岡井:じゃあ続きはまた今度やろうか。
--END--